2008年12月18日

557) 小売業の盗難被害

10年ほど前の話になりますが、セキュリティ関連の仕事をしていたことがあります。いわゆる、
監視カメラや盗難防止タグの販売です。このところ、監視(セキュリティ)カメラのことをテレビ
などでしきりに「防犯カメラ」と呼んでいますが、当時は「カメラで犯罪は抑制できるが防止は
できない」ということで「防犯カメラ」とは呼ばなかったと記憶していますが、時代の流れなの
でしょうか?日経BPネットに聞き覚えのある会社の社員のインタビューが記事として載ってい
ました。タイトルは「1兆円を超える日本の小売業の盗難被害」と言うものでした。
「エッ、1兆円も被害にあってるの?」と言うのがタイトルから感じたことです。

監視カメラを販売していたのですが、お客様の要望により盗難防止タグを開発することとなり
ました。盗難防止タグは一般的にはコイルの入ったシールを商品に貼り付けてゲート、アンテナ
と呼ばれる場所を通過するとゲートが大きな音を出し、盗難(万引き)を抑制するものが主流
でした。それは現在でも使用されており、多くはこのタイプだと思われます。CDショップや
おもちゃや、本屋さんや、ファンシーショップなどで見かけるゲートがそれです。当社がお客様
より依頼されたのは「自鳴式タグ」と呼ばれるもので、それがついた商品がゲートやアンテナを
通過すると、タグ自身が大きな音を出すものです。又、商品からそのタグを引きちぎると、同じ
ように音を発するものです。ハンドバック売り場などで現在でも見かけることがあります。その
ような商品を取り扱っていた関係もあり、インタビューに応じていたチェックポイントシステム
ジャパン社の名前を見て興味を持った次第です。インタビュー応じていたのが同社のマーケティ
ング部部長の高野利規子氏でした。

記事によると、現在日本の小売店におけるロス(お客さんの盗難や従業員の盗難、仕入れ時の
カウントミスなども含む)は1年間で日本で1兆488億円にも及ぶそうです。又、北米では4兆
7,418億円、欧州では4兆5,120億円も被害があるそうです。日本のロスの内訳は、顧客による
盗難が57.3%、従業員による盗難が18.5%、管理ミスが16.9%、サプライヤー/業者による不正
が7.3%とのこと。世界平均で見ると、顧客による盗難が41.2%、従業員による盗難が36.5%で
あり、日本では万引き被害の問題が最も深刻といえるようです。逆に北米の場合は従業員による
盗難がトップを占めるようであり、その地域による違いが歴然としているようです。北米での従業
員による盗難が占める割合はそれぞれ46.3%とのことですので、驚くべき数字です。
そのため、北米などでは防犯センサーを従業員通用口にも設置するケースが多いとのことでまず
は従業員を疑うのが先決のようです。

盗られやすい商品の傾向は日本も全世界も変わりは内容です。自動車用品、ホームセンターの
高額な電動工具・先端パーツ、小型ノートパソコン、医薬品、化粧品、香水、DVD、CD、電子ゲー
ムなど、高額・小型で転売がしやすいものが中心とのことです。以前日本ではATMの盗難が頻繁
にありましたが、このところそのような話は聞かなくなりましたね。10年前と比較しても盗難され易い
商品は代わりがないようですが、被害金額は大幅にアップしているようです。当時は学生さんが
遊び(ゲーム)感覚で万引きをするケースが多かったようですが現在も同じでしょうか?又、万引き
による被害がなぜ深刻かというと、例えば1,000円のものが万引きされると仕入れ金額が700円で
あっても、損失は1,000円となります。1,000円の損失を埋めるためには、300円の利益のある同じ
商品を余分に3個売ってもまだ足りないことになるからです。少なくても4倍うらなければならないから
です。その意味でも万引きは軽犯罪ではありますが、商店経営においては重大な問題となっている
訳です。

高野氏はこれから景気が後退すると売り場の従業員の数が減り、従業員だけでロス被害を対応する
のが難しくなるといっています。又、万引きが増加するかも知れません。その防止策として盗難防止
センサの設置が増えることは業者としては良いことでしょうが、世の中としては決して喜ばれること
ではありません。「つい出来心でやってしまった」と言い訳をする万引き犯が多いようですが、統計的
には計画犯が多いようです。万引きって重大な犯罪であることを認識しましょうね。

 



Posted by walt at 20:57│Comments(0)
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